大阪高等裁判所 平成10年(行コ)25号 判決 2000年3月24日
東京都千代田区一番町二三番地二
控訴人
酒井夏子
(以下「控訴人酒井」という。)
控訴人
亀井治美
(以下「控訴人亀井」という。)
右両名訴訟代理人弁護士
守山孝三
右亀井訴訟代理人弁護士
板東宏和
同
前川宗夫
同
三木孝彦
同
石那田隆之
被控訴人
国
右代表者法務大臣
臼井日出男
右指定代理人
谷岡賀美
同
原田一信
同
稲沢信哉
同
小谷宏行
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取消す。
2 被控訴人は、控訴人酒井に対し、三億〇一〇二万〇五五九円及び本判決添付別表(以下「別表」という。)一記載の合計欄の各金額につき、各納付年月日の翌日から起算して一月を経過した日から支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。
3 被控訴人は、控訴人亀井に対し、三億〇七一五万一九五九円及び別表二記載の合計欄の各金額につき、各納付年月日の翌日から起算して一月を経過した日から支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。
4 控訴人らが平成三年七月一一日付で行った相続税の申告に係る同人らの各三億〇九〇四万九二七五円の租税債務、控訴人らが平成四年六月二五日付で行った相続税の修正申告に係る控訴人酒井の一〇四万三三九二円の租税債務及び控訴人亀井の八五七万六〇〇七円の租税債務並びに被控訴人が平成三年三月二七日付で行った相続税延納許可に係る控訴人らの租税債務(ただし、控訴人らの平成一〇年四月二七日までの各納付分は除く。)の存在しないことを確認する。
5 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二当事者の主張
次のとおり付加・訂正するほかは、原判決事実摘示中の「第二 当事者の主張」(原判決四頁一〇行目から二三頁四行目まで)の記載と同一であるから、これを引用する。
1 原判決四頁末行から同五頁一行目にかけての「原告らが」の次に「亡亀井の債権債務を各四分の一の割合で」を加え、同五行目から同六行目にかけての「原告酒井夏子(以下「原告酒井」という。)」を「控訴人酒井」と、同七行目の「原告亀井治美(以下「原告亀井」という。)」を「控訴人亀井」と、同末行から同六頁一行目の「合計二億三六四八万四七〇〇円」を「合計三億〇一〇二万〇五五九円(なお、同表番号(12)及び(13)については、控訴人酒井の母亀井喜代美(以下「喜代美」という。)が連帯納付義務者として納付した。)」と、同行から同二行目にかけての「合計二億四二六一万六一〇〇円」を「合計三億〇七一五万一九五九円(なお、同表番号(12)ないし(15)については、喜代美が連帯納付義務者として納付した。)」とそれぞれ改める。
2 同八頁一行目の「カメイガラス株式会社(」の次に「平成一一年一月二一日午後二時三〇分破産宣告、」を、同八行目の「提出されていたところ、」の次に「控訴人らの委任を受けて」をそれぞれ加え、同一〇頁末行から同一一頁一行目にかけての「13―1―3の権利金の」を「13―1―3により、相当地代に満たない地代を収受している場合、所定の算式により計算した金額から実際に収受している権利金の額及び特別の経済的な利益の額を控除した金額を借地人等に対して贈与したものとする、権利金の」と改める。
3 同一五頁三行目の次に行を改め、次のとおり加える。
「6 不当利得(予備的主張)
亡亀井の相続開始時、本件宅地には、カメイガラスを債務者とする債権額ないし極度額合計四〇億一〇〇〇万円とする担保権が設定されていたが、カメイガラスの業績及び資産状態等からすると、カメイガラスにおいて、被担保債務を返済して右の担保権を抹消できる見込は乏しい状況であった。したがって、右の担保権の負担のある本件宅地の時価は、客観的交換価値がなく、零として評価されるべきであり、また、控訴人らが取得した本件宅地の共有持分権は、後発的に右の担保権の実行により喪失する可能性があるもので、その権利取得は未確定であった。
控訴人らの本件相続税の申告後、課税庁は、調査を行い、課税庁の一般的慣行どおり、本件宅地を課税対象とし、担保設定のない土地と同じ評価をし、その他、右の申告書に漏れていた遺産を加算し、それらに基づいて、相続税額の算出をし、その結果を書面に記載し、控訴人ら代理人である堀部に対し、右の書面どおりに修正申告をするよう勧告し、勧告に従わざるをえないとの考えの堀部の意見に従い、控訴人らは、右勧告どおり、掘部に委任して本件相続税の修正申告をしたものであり、課税庁は、控訴人らに対し、右の修正申告をさせたものである。
右の課税庁の控訴人らに対する、修正申告をさせる行為は、本件宅地の時価を超える担保負担があって、相続税の担税力の乏しい遺産を相続した控訴人らに対し、担保の負担がなく、担税力のある土地を相続した者と同じ相続税を負担させるものであるから、憲法一四条の法の下の平等に違反し、無効である。また、担税力のない財産を相続した控訴人らに対し、担税力の応能負担を超えた課税であるところ、控訴人らは、相続財産以外に納付すべき相続税の引当てとなる財産を所有しないから、相続税の納付のため、借金と差押地獄で苦しめられており、これにより、憲法二五条の健康で文化的生活を営む権利を侵害され、また、同法一三条の幸福を追求する権利を侵害されており、右各条違反により、無効である。
その後、右の担保権の実行により、控訴人らは相続により取得した本件宅地の共有持分権を喪失したが、カメイガラスの破産宣告により、控訴人らのカメイガラスに対する求償債権もほとんど回収不能といわざる
をえない。
以上のとおり、被控訴人は、控訴人らから、本件申告にかかる本件宅地に関しての租税を徴収できないというべきであり、既に被控訴人が控訴人らから徴収した税金は、控訴人らに対し、法律上の原因を欠く利得として返還すべきである。」
4 同一五頁四行目冒頭から同六行目の「二億四二六一万六一〇〇円の返還」までを「7 よって、本件申告は錯誤により無効であり、仮に錯誤に該当しないとしても、控訴人らが納付した相続税は、被控訴人にとって法律上の原因を欠く利得であるから、過誤納金あるいは不当利得金として、被控訴人に対し、控訴人酒井は三億〇一〇二万〇五五九円、控訴人亀井は三億〇七一五万一九五九円の各返還」と改める。
5 同一七頁九行目の次に行を改め、次のとおり加える。
「(八) 同6のうち、本件宅地につき、控訴人ら主張の担保権が設定されていることは認めるが、その余の主張は争う。
相続税における相続財産の価額の確定は、相続開始時の現況によって確定して完結し、相続開始後の抵当権の実行が相続財産の課税価格に影響することはないから、被控訴人が控訴人らから徴収した租税が法律上の原因を欠く利得になることはない。
本件は、相続開始後に抵当権が実行されたことによって、相続財産の価額が変動したものにすぎないから、控訴人らの予備的主張は失当である。
また、控訴人らの各憲法違反の主張もいずれも理由がない。」
6 同一八頁六行目の「土地に」の次に「建物所有を目的する」を、同二一頁九行目の「納付された税金は」の次に「国税通則法五六条一項の」を、同二二頁二行目の「各二億円については、」の次に「本訴提起までに五年以上経過しているから、被控訴人は、」をそれぞれ加える。
7 同二三頁四行目の次に行を改め、次のとおり加える。
「五 再抗弁に対する認否
再抗弁については争う。」
理由
一 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加・訂正するほかは、原判決理由説示(原判決二三頁六行目から同三一頁一行目まで)と同一であるから、これを引用する。
1 原判決二四頁末行の「甲一ないし三、九、」を「甲一ないし五、九、一二、一三、三五、五八、六〇、」と改め、同二五頁一行目の次に行を改め、次のとおり加える。
「(一) 控訴人らの祖父亀井治助は、従前から、カメイガラスに対し、所有の土地を賃貸していたが(甲五)、昭和四〇年一一月に本件宅地を交換によりカメイガラスから取得し(なお、カメイガラスは昭和三八年七月に本件土地上に事務所・倉庫を新築していた。)、同土地をカメイガラスに賃貸し、昭和四二年七月一五日付で本件宅地の賃貸借契約書を作成した(甲一二)。
その後、相続により本件宅地を取得した亡亀井とカメイガラスは、昭和五八年一二月一日、土地の使用目的・鉄筋コンクリート造、事務所用、倉庫用建物の敷地、契約期間・同日から昭和七八年一一月三〇日、地代・月額一八〇万円(年額二一六〇万円)とする、本件宅地の賃貸借契約書を作成し(乙四)、昭和五八年一二月、北税務署長に対し、亡亀井はカメイガラスに本件宅地を使用させることとしたが、本件賃貸借契約に基づき将来借地人等から無償で土地の返還を受けることになっているとの内容の本件無償返還届出書(乙二)を提出した(なお、同書では、本件宅地の価額四億円〔相続税評価額二億七〇二九万二〇九四円〕で、地代は右価額の約八パーセントに当たる年額二一六〇万円とされている。)。
そして、昭和六三年八月、亡亀井とカメイガラスは、北税務署長に対し、右と同様の本件無償返還届出書(乙三)を提出した(なお、同書では、本件土地の価額及び相続税評価額とも六億四七七九万四六〇二円で、地代は右価額の約八パーセントに当たる年額五一八四万円とされている。)。」
2 同二五頁二行目の「(一)」を「(二)」と改め、同二六頁三行目の「本件宅地には」の次に「、カメイガラスを債務者として、」を、同七行目の「カメイガラスは」の次に「、亡亀井が死亡した当時、資本金五〇〇〇万円、発行株式一〇〇万株(一株当たりの券面額五〇円)で亀井一族の同族会社であるが、直前期末の総資産価額(帳簿価額)五五億八七二八万六〇〇〇円、直前期末以前一年間の取引金額九七億四五〇九万四〇〇〇円で、大会社であり、相続税評価額による資産合計六一億七八一五万五〇一五円、同負債合計額五三億三九三八万二六二〇円、同純資産価額八億三八七七万二〇〇〇円であり、課税時期現在の一株当たりの純資産価額(相続税評価額)は五六七円であり、」をそれぞれ加え、同一〇行目の「(二)」を「(三)」と改める。
3 同二七頁四行目の「土地に」の次に「建物所有を目的として」を、同一〇行目の「しかし、」の次に「法人税通達13―1―7の権利金の認定見合せの定めは、」をそれぞれ加え、同二八頁一行目の「右のような経済的価値の移転は認められないが、」を「右約定は、借地法上は無効であり、借地人に不利な契約条件としてその定めがなかったものとみなされるが、地主と借地人との間に特殊な関係があるため、右のような定めがされたとき、常に権利金の認定課税を行うことは経済実態に即さないことから、無償返還届出書が提出されたことを要件として、相当の地代の額と実際に収受している地代との差額を借地人に対して贈与したものとして取り扱うにとどめ、権利金の認定課税を行わない取扱を定めたものであり、」と、同八、九行目を次のとおりそれぞれ改める。
「 控訴人らは、本件通達適用の要件として、借地権消滅の際に立退料を請求しないとの約定及び当該賃借権設定当時、借地権設定の対価としての意義を有する権利金授受の取引慣行があったことが必要であるところ、本件においてはこれらの要件を欠いていたと主張するので、検討する。
本件通達は、国税庁長官通達「法人税基本通達等の一部解説について」(昭和五五年一二月二五日付直法2―15により、法人税通達13―1―7の権利金認定見合せの規定を新設したことに伴い、この適用にかかる要件を定めたものである。そして、右の国税庁長官通達の第一の三六の(経過的取扱いは(8))の(1)によると、この通達による改正後の13―1―7の取扱いは、法人が、この通達の日以後に借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合の法人税に適用するものとし、同日前に行った借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合の法人税については、なお従前の例により、ただし、法人が、同日前に行った借地権の設定等(既に13―1―7により権利金の認定課税が行われた場合を除く。)により他人に土地を使用させている場合において、これにつき同日以後13―1―7の取扱いの適用を受けることとして遅滞なく13―1―7に定める届出をしたときは、これを認めると規定されている。したがって、昭和五五年一二月二五日以後に借地権を設定したものに係る無償返還届出書については、借地権の設定に際し、当該地域において、権利金授受の取引慣行のあることが前提条件となるが、同日より前に借地権を設定したものに係る無償返還届出書については、借地権の設定に際し、当該地域において、権利金授受の取引慣行のあることはその適用要件とはされていないというべきである。
右1(一)の認定によると、本件賃貸借契約は、昭和五五年一二月二五日より前に締結されているから、本件通達適用の要件として、借地権消滅の際に立退料を請求しないとの約定の存することは必要であるが、当該賃借権設定当時、借地権設定の対価としての意義を有する権利金授受の取引慣行があったことは必要でない。そして、右の認定によると、借地権消滅の際に立退料を請求しないとの本件無償返還届出書の提出されていることが明らかである。したがって、控訴人らの右の主張は採用できない。
控訴人らは、本件通達は、法人が賃貸人である場合の定めであり、法人が賃借人である本件に本件通達を通用することは租税法律主義に反すると主張し、確かに、法人税法施行令一三七条は、法人が他人に借地権等を設定して土地を使用させる場合についての定めであり、逆に法人が借地権の設定を受ける場合については正面からは定めていないが、後者について前者とその取扱いを異にすべき理由はなく、法人が賃借人である場合にも本件通達が適用されるというべきであるから(最高裁平成四年一一月一六日第一小法廷判決・判例時報一四四一号六六頁参照)、右主張は採用できない。」
4 同三〇頁三行目から同四行目にかけての「カメイガラスは、」の次に「負債として五三億円強を負っていたが、資産として六一億円強を有していたものであり、順調な経営をしていた大会社というべきであり、」を加える。
5 同三一頁一行目の次に行を改め、次のとおり加える。
「第三 不当利得の主張について
一 控訴人らは、亡亀井の相続開始時、本件宅地には、カメイガラスを債務者とする巨額の担保権が設定されていたが、債務者らが被担保債務を返済する見込は乏しかったから、本件宅地は価値がなく、後発的に右の担保権の実行により、控訴人らが右宅地の共有持分権を喪失する可能性があったもので、課税庁が、本件宅地を課税対象とし、その課税価格につき担保設定のない土地と同じ評価をして相続税額を算出し、それに基づき、修正申告をするよう勧告し、控訴人らを従わせた行為は、憲法一三条、一四条及び二五条に違反し、無効であると主張するので、検討する。
前記認定によると、カメイガラスは、亡亀井が死亡した当時、合計額が五三億三九三八万二六二〇円にのぼる巨額の債務を抱えていたが、他方、相続税評価額の合計が六一億七八一五万五〇一五円となる資産を有しており、直前期末の総資産価額(帳簿価額)も五五億八七二八万六〇〇〇円、直前期末以前一年間の取引金額九七億四五〇九万四〇〇〇円という、大会社であり、相続税評価額による純資産価額は八億三八七七万二〇〇〇円で、健全経営であったことが認められるから、債務者であるカメイガラスは右の被担保債務を返済する見込は十分あったというべきであり、右の返済の見込みがないことを前提とする、控訴人らの各憲法違反の主張はいずれも理由がない。
二 控訴人らは、亡亀井の相続開始時、本件宅地にカメイガラスを債務者として設定されていた担保権の実行により、相続により取得した本件宅地の共有持分権を喪失し、カメイガラスも破産宣告を受け、控訴人らのカメイガラスに対する求償債権も回収不能であるから、被控訴人は、控訴人らから、本件申告にかかる本件宅地に関しての租税を徴収できず、既に被控訴人が控訴人らから徴収した税金は、法律上の原因を欠く利得として返還すべきであると主張するので、検討する。
確かに、相続人が、不動産を相続して、相続税を賦課徴収されたところ、相続開始時に既にその不動産に設定されていた担保権の実行により、右の不動産の所有権等を喪失した場合、相続人に格別の落ち度がないのに、相続税を納付しなければならず、また徴収された相続税の返還を求めることができないというのは、正義公平の原則に反し、国は、納税者に対し、喪失した不動産の価格の限度において、課税処分の効力を主張しえないものとなり、右処分に基づいて税を徴収しえないだけでなく、徴収済みの税額については法律上の原因を欠く利得として納税者に返還すべきものとすべき場合が考えられないではない(最高裁判所昭和四九年三月八日第二小法廷判決・民集二八巻二号一八六頁参照)。
しかしながら、そもそも相続税は、相続等によって財産を取得した者に対して、その取得財産の価額を課税標準として課税される租税であるところ、相続税法二二条は、相続等により取得した財産の価額は、取得時の時価によるとの評価の原則を定め、相続財産の価額は、相続開始時の現況によって確定するものとしているのである。そして、相続不動産の上に、相続人以外の債務者のために担保権が設定されている場合、将来における、担保権の実行や求償の可能性の程度を勘案して右不動産の価額を評価しようとしても、その客観性を担保することはまず不可能であるから、相続開始時において、担保権が実行されることが確実であり、かつ、債務者に求償して弁済を受け得る見込みがない場合以外は、担保権の設定は相続財産の評価に影響しないものとする取扱いは、徴税政策上の技術的見地から是認できるところである。
そして、本件の場合、既に認定のとおり、相続開始時におけるカメイガラスは健全経営で、被担保債務を弁済できる見込みも十分あったのであり、その後カメイガラスは、控訴人らに対し、高額の金員の貸付をしていること(甲四九の1ないし3、五〇、五一の1、2、)や、本件宅地について、担保権の実行としての競売開始決定がなされたのが平成一一年二月であること(甲六一)などからすると、本件課税処分の結果が維持されることが、正義公平の観念に照らして許されない場合にあたるとまでいうことはできない。そのうえ、仮に右が肯定されるとしても、控訴人らが、本件宅地に設定されていた担保権の実行により、同宅地の共有持分権を喪失したとすると、控訴人らは、平成三年七月にカメイガラスからそれぞれ借受けた二億円を相続税として納付しているから(甲五一の1、2、二七、二八、五八、弁論の全趣旨)、その分については、カメイガラスが控訴人らの債権を代位行使して国に対して不当利得の返還請求ができるとも考えられるし、控訴人らが、本件宅地の共有持分権を喪失したことによって取得したカメイガラスに対する求償債権も現時点では必ずしも明確ではなく、控訴人らとカメイガラスとの交渉の結果次第では、右当事者間の債権債務関係も変動することが予想されることなどに照らすと、未だ、控訴人らの損失及び被控訴人の利益が確定したとはいえないから、この点からも、控訴人らの不当利得の返還請求を認めることはできない。
以上の次第で、控訴人らの不当利得の主張は採用できない。」
二 よって、控訴人らの本件請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり、右と結論を同じくする原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条、六五条一項を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 岡原剛 裁判長裁判官秋元隆男は退官のため、裁判官横田勝年は転補のため、いずれも署名押印することができない。裁判官 岡原剛)
別表一
納付税額(酒井夏子)
<省略>
表二
納付税額(亀井治美)
<省略>